夢日記 その3

高層ビルの様なバスを運転する運転手。運転席と乗客席は最上階にある。私は乗客として運転席後方に座っている。運転手は制帽を目深に被っているので顔は見えない。折り目正しい制服が何故かプラスチックのパイプを連想させる。バスの遥か下の道路を見下ろす。碁盤の目の様な道路の前後左右を米粒ほどの大きさの車がひっきりなしに並走、または交差している。

こんなに高くて巨大な物をちゃんと運転できるのか?真下の様子などほとんど分からないではないか?私は言いようの無い不安に駆られる。

そんな不安をよそにバスは走り続ける。

市街を抜け山のトンネルに差し掛かる。
高層ビルの様なバスが通過できるトンネルがあるはずない。しかし、そこに私のイマジネーションは働かない。バスは難なく通り過ぎ、出口に差し掛かる。と、出口付近の黒いアスファルトの帯が突然、真っ白な雪の帯に変わる。あ!っと思った瞬間、運転手はハンドルを右に切った。高層ビルの様なバスは横ざまに回転、雪の帯の上をそのまま滑っていく。運転手は必死にハンドルを左右に振り回し高層ビルの様な車体を立て直そうとしている。その必死さは常軌を逸している。やっとの事で前向きに態勢を戻し、ほっとした次の瞬間、真下に渋滞の列。急ブレーキをかけるが間に合わず、高層ビルの様なバスははるか下の米粒の様な車をガシャガシャ押しのけ、圧し潰していく。運良く脇に押し分けられた車の下から女が両手を上げた状態でにょきっと現れたのが見えた。まなこを上に向けいかにも死んだ、と言う芝居掛かった表情。高層ビルの様なバスは無数の米粒の車を正に寿司詰め、ぎゅうぎゅうに詰め切った所で止まった。

ああ、大変な事になった…この様子ではどれほど死人が出た事かわかりはしない。
これは大変な事になった…
だが、これは私がやった事じゃない、やったのは運転手なのだと内心胸を撫で下ろしている。

ふと、運転手を見る。
運転手はハンドルに絡まった様な格好で顔を埋ずめている。プラスチックのパイプの様だった制服は溶けてしまったかの如く歪み、複雑なシワの文様を運転手の背中に刻ん込んでいる。それは何故か深い海の底を連想させる。絶望感が運転席にウワンウワンと音も無く反響している。
私は気の毒さを感じると同時にこの運転手が生身の人間だった事に改めて驚く。

運転手は身じろぎもせずうずくまっていたが、決意したのか急に立ち上がり、真ん中の通路を後方の出口に向かってツカツカ歩いて出ていった。

この高層ビルの様なバスの中では逃げ場は無い。観念し自首するのだろう。

しかし、こんな高層ビルの様なバスを運転させられ、一生を無駄にするとは。
私はますます運転手が気の毒になった。





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2017年6月23日 |